近年、世界的に高まる健康志向やサステナブルなライフスタイルの流れを受け、日本でも食の多様性(フードダイバーシティ)に注目が集まっています。とりわけ、イスラム教徒向けのハラル対応や、動物性食品を一切避けるヴィーガン対応は、人口減少が進む国内市場を超えて、新しい顧客層を獲得する手段として注目されています。
さらに、日本政府観光局(JNTO)の報告によると、2022年の訪日外国人総数は前年比から3647.5%という驚異的な伸びを示しました。コロナ禍からの回復とともに、海外からの観光客が急増している現在、まさにインバウンド需要を取り込む絶好のチャンスだといえます。
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1. 「日本でしたいこと」1位は“日本食を食べる” ~食を制する者がインバウンドを制す~
国土交通省観光庁が実施した「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日外国人が「日本でしたいこと」の1位は「日本食を食べること」(78.3%)でした。これは2位の「ショッピング」(49.6%)を大きく上回り、その人気の高さが窺えます。さらに、「次回日本に来たときにしたいこと」にも72.2%が「日本食を食べること」と回答しています。
つまり、多様な食文化への対応が進むほど、より多くのインバウンド需要を取り込める可能性が高いのです。なかでも宗教上の食事制限に対応した「ムスリムフレンドリーなメニュー」や、健康を背景に増加している「ヴィーガン・ベジタリアン向けメニュー」は、2025年の今後の観光市場で大きなカギを握るでしょう。
2. ハラル対応・ヴィーガン対応とは?
まずはじめに、ハラルとヴィーガンの定義について確認しておきましょう。
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ハラル対応
イスラム教の戒律で許された食材や調理法を守ることを指します。豚肉やアルコールを摂取しないことは大きな特徴の一つです。また、鶏肉や牛肉なども「ハラル認証」を受けている肉を使用する必要があります。調味料や出汁、調理器具などにも注意が必要です。
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ヴィーガン対応
肉や魚、乳製品、卵、はちみつなど、あらゆる動物性食品を摂取しない食生活を指します。サラダが中心というイメージを抱く方も多いですが、近年では植物性の素材を活かした多彩な料理が増えており、揚げ物やスイーツなど「ヴィーガン=味気ない」わけではない点が大きな特徴です。
これらに加えて、魚や牛乳・卵は食べられるが肉は避けたい「ペスカトリアン」や「ラクト・オボ・ベジタリアン」といった中間的な選択をする人々も増えています。さらに「週1回だけヴィーガン食を摂る」「ゆるベジ」などライトな層も台頭しており、“完全菜食主義だけをターゲット”とするより、幅広い食の多様性を意識することが重要になってきています。
3. 「ムスリムインバウンド対応」で広がる“おもてなし”の可能性
訪日外国人の中には、ムスリムの方が多く含まれます。国や地域にもよりますが、世界人口の約4分の1がイスラム教徒とも言われ、今後さらに人口が増えていく見込みです。日本での観光を楽しみに訪れるムスリムの方に「宗教上の理由で、食べられるものがない」という残念な思いをさせてしまっては、せっかくの“おもてなし”の機会を逃すことになりかねません。
一方、ハラル対応のメニューや認証設備などを整備すれば、「ムスリムのお客様が安心して日本食を楽しめる」という大きな強みとなります。こうした配慮は、結果として他の宗教やさまざまな食事制限を持つ方にも選ばれるお店づくりにつながるため、**食の多様性を重視した“おもてなし”**こそが、今後のインバウンド戦略の要といえるでしょう。
4. コロナ禍を乗り越え、売上を維持した老舗店の事例
名古屋の老舗味噌煮込みうどん店「大久手山本屋」は、コロナ禍前からハラル対応やヴィーガン対応を進めていました。コロナ禍で海外からの観光客は一時的に激減したものの、同店が積極的に取り組んできたフードダイバーシティへの対応は、日本国内での健康志向や「野菜を中心にしたい」という声を取り込み、売上を維持したといいます。
実際に、Uber Eatsでの注文に限ると8割がヴィーガンメニューだったとのデータもあり、「サラダしか出さないのではなく、湯葉や高野豆腐、野菜の天ぷらなど、しっかり食べ応えのあるメニューを提供した」ことが奏功しました。大久手山本屋の成功例は、ハラルやヴィーガン対応は特定の人だけでなく、幅広い層に受け入れられるポテンシャルを持つことを示しています。
5. ハラル/ヴィーガン対応がもたらすメリットと価格設定のポイント
(1)新たな顧客層の獲得
2022年以降、訪日外国人は着実に戻り始め、日本政府の掲げる目標では年間4000万人規模のインバウンド客が期待されています。その中にはムスリムやヴィーガンを含め、多様な食のニーズを持つ方々が数多く含まれます。まだまだ対応が進んでいない飲食店や宿泊施設が多いため、先んじてメニューや設備を整えることで大きな差別化要因になるでしょう。
(2)コストダウンにつながるケースも
ハラル肉や一部の輸入素材は割高になるイメージがありますが、たとえば鶏肉を湯葉や高野豆腐に切り替えるなどで、動物性原材料を控えることによるコストダウンや食材ロスの削減につながる場合もあります。また、調理や保管がシンプルになることで業務効率が上がる可能性もあります。
(3) 客単価を上げることが可能
宗教やライフスタイルに基づく食事ポリシーを重視するお客様は、“安心して食べられる”ことに対して適正な価格を支払う意識が高い傾向があります。通常メニューと同等、またはそれ以上の価格設定でも十分に受け入れられる可能性があります。
さらに、円安が続く中で訪日観光客にとって日本円での価格は割安に感じられるため、価格を上げてもそのインパクトは限定的です。また、ヴィーガンやムスリムのお客様は「自分の食のポリシーをしっかり守った食事」に価値を見出しており、その対価として適正な価格を支払う意識が強いです。
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6. OEM活用でリスクを最小限に ~食文化の多様化への対応~
ハラルやヴィーガン対応に興味があっても、自社だけで新メニューや製品開発を一から進めるのは簡単ではありません。そこで近年注目されているのが「OEM(相手先ブランドによる製造)」の活用です。冷凍食品や加工食品などを小ロットからテスト生産できるため、大規模な設備投資を行わずに新規マーケットへ参入できます。
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ハラルフレンドリー製造ライン
ムスリム向けに必ずしも厳格なハラル認証を取得しなくても、使用食材を開示するといった企業努力をすることで「ムスリムフレンドリー」としてアピールできます。観光庁も厳格な認証取得よりも、フレンドリー対応を推奨しています。
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ヴィーガン仕様レシピの開発支援
ヴィーガン対応は味付けや食感の調整がカギです。出汁や調味料から動物性素材を取り除いても、美味しく提供できるノウハウを持つOEM企業と組むことで、プロの手を借りながら製品化できます。
こうしたOEMサービスを利用すれば、スモールスタートでハラル/ヴィーガン製品を展開できるため、「まずは少量生産で市場を探り、軌道に乗れば生産を拡大する」という段階的な戦略を取りやすくなります。
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7. まとめ:食の多様性が日本の「おもてなし」をさらに輝かせる
2025年現在、コロナ禍を乗り越えた世界は以前にも増して人や情報が行き交い、日本を訪れる外国人観光客の数も回復・増加傾向にあります。こうしたインバウンド需要を取り込むカギは、「食の多様性」への対応です。実際、訪日外国人の「日本でしたいこと」1位が“日本食を食べること”である以上、ムスリムやヴィーガン、ベジタリアンといったあらゆる層への配慮を行うことが、今後の競争力アップとリピーター獲得につながります。
老舗企業のように伝統を守りつつ変化に対応していく姿勢はもちろん、OEMを活用するなどリスクを抑えた方法で新メニューや新商品を開発する選択肢もあります。「食のハラル・ヴィーガンインバウンド対応でのおもてなし」は、お客様に安心感と満足感を提供するだけでなく、「日本食の魅力を世界中の人々に届ける」という大きな使命感にもつながるでしょう。
ハラル/ヴィーガン対応は、「特定の人だけが必要とする特別なサービス」ではなく、より多くの人々に日本の食文化を楽しんでもらうための“未来への投資”でもあります。まずは小さな一歩からでも構いません。多様なニーズを尊重し、次代の食文化をリードする存在として世界に選ばれるお店・企業になるために、今こそ行動を起こしてみてはいかがでしょうか。
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参考資料
- 日本政府観光局(JNTO)「2022年 国籍別 / 目的別 訪日外客数」
- 国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査 2022」
- ハラル・ジャパン協会関連資料