[観光立国推進基本計画の策定を指示する石破総理]
目次
1. [石破総理による観光立国推進基本計画の策定指示]
2. [現行の観光立国推進基本計画の目標達成状況]
3. [地方誘客の促進と持続可能な観光の推進]
4. [2030年の訪日外国人6000万人・消費額15兆円への道筋]
5. [観光立国がもたらす地方創生2.0と日本経済への影響]
6. [観光産業のスマート化と高付加価値化への取り組み]
7. [まとめ：インバウンド観光の未来と私たちにできること]
石破総理による観光立国推進基本計画の策定指示
令和7年3月18日、石破総理は総理大臣官邸で第26回観光立国推進閣僚会議を開催し、新たな「第五次観光立国推進基本計画」の策定を指示しました。2024年のインバウンド市場が好調であったことを踏まえ、「好調な流れを確固たるものとしつつ、効果を全国に波及させていくことが重要」と強調しています。
観光立国推進基本計画は、観光立国推進基本法に基づき、日本が観光立国を目指す上での具体的な目標や施策を示した重要な指針です。石破総理は、この計画を通じて「観光は地方の根幹的な産業であり、若者も女性も活躍できる、地方創生2.0の切り札である」との認識を示しました。
現行の観光立国推進基本計画の目標達成状況
現行の観光立国推進基本計画は2023年から2025年度を計画期間としており、以下の目標が掲げられています：
- 訪日外国人旅行者数：2019年水準超え（3,188万人）
- 訪日外国人旅行消費額：5兆円（2019年実績4.8兆円）
- 訪日外国人旅行消費単価：20万円（2019年実績15.9万円）
- 訪日外国人旅行者1人当たり地方部宿泊数：2泊（2019年実績1.4泊）
注目すべきは、2024年の訪日外国人旅行者数が約3,700万人、消費額は約8.1兆円と、すでに過去最高を記録し、当初の目標を大幅に上回っていることです。しかし、地方部宿泊数については1.36泊にとどまり、目標の2泊には届いていない状況です。
これは、多くの訪日外国人観光客が東京や大阪、京都などの大都市圏に集中し、地方への波及効果が限定的であることを示しています。この課題に対応するため、石破総理は新たな基本計画で地方誘客を重点施策として位置づけています。
観光立国を推進するにあたり、石破総理は特に「地方誘客のより一層の促進」と「持続可能な観光の推進」を重視しています。
地方誘客の促進
地方誘客については、以下の取り組みが強調されました：
1. 地方観光の魅力向上：各地域の固有の文化や自然を活かした観光資源の開発
2. 航空ネットワーク・二次交通の整備：地方空港の国際化や、空港から観光地へのアクセス改善
3. 日本版ESTA（電子渡航認証システム）の導入前倒し：スムーズな入国手続きによる観光客の利便性向上
4. 大阪・関西万博を契機とした地方誘客：万博来場者を全国各地へ誘導する施策の展開
これらの取り組みにより、インバウンド観光の効果を日本全国に波及させることを目指しています。
持続可能な観光の推進
石破総理は持続可能な観光について、「インバウンドの誘客を通じ、地域がそのメリットを感じられることが重要」と述べ、以下の点を強調しました：
1. 観光産業のスマート化・高付加価値化：デジタル技術の活用や高品質サービスの提供
2. もうかる産業への転換：観光を通じた地域経済の活性化
3. オーバーツーリズムの未然防止・抑制：観光客の集中による弊害を防ぐ対策
4. 好事例の横展開：成功モデルを全国に広げる取り組み
持続可能な観光は、地域住民の生活の質を保ちながら、観光客にも満足度の高い体験を提供するという、バランスの取れた発展を目指すものです。
2030年の訪日外国人6000万人・消費額15兆円への道筋
石破総理は新たな観光立国推進基本計画に、2030年までに訪日外国人観光客数6,000万人、消費額15兆円という野心的な目標を盛り込むよう指示しました。これは現在の実績と比較すると、訪日観光客数で約1.6倍、消費額では約1.9倍という高い目標設定です。
この目標達成のためには、単に観光客数を増やすだけでなく、以下のような質的向上も必要とされています：
- 滞在日数の延長：地方への誘客促進による全国的な周遊の実現
- 消費単価の向上：高付加価値なサービスの提供による消費の拡大
- リピーター率の向上：満足度の高い体験提供による再訪の促進
- 多様な国・地域からの誘客：特定の国に依存しない安定したインバウンド構造の構築
[詳しい記事はこちら：日本の観光6000万人・15兆円目標の達成可能性と必要条件をまとめてみました]
観光立国がもたらす地方創生2.0と日本経済への影響
石破総理は、観光を「地方創生2.0の切り札」と位置づけています。観光産業の活性化は、地方経済に多大な波及効果をもたらします：
1. 雇用創出：若者や女性など多様な人材の活躍の場の提供
2. 関連産業の活性化：宿泊、飲食、交通、小売など幅広い産業への経済効果
3. 地域のブランド力向上：国内外への認知度向上による持続的な発展
4. 文化・伝統の保存と継承：観光資源としての地域固有の文化の再評価
観光立国の推進は、人口減少・高齢化が進む日本の地方において、新たな成長エンジンとなることが期待されています。
観光産業のスマート化と高付加価値化への取り組み
持続可能な観光を実現するためには、観光産業自体の変革も重要です。石破総理が言及した「観光産業のスマート化・高付加価値化」には、以下のような取り組みが含まれます：
1. デジタル技術の活用：AIやIoTを活用した効率的なサービス提供
2. 多言語対応の充実：言語の壁を超えたコミュニケーションの実現
3. キャッシュレス決済の普及：スムーズな支払い環境の整備
4. 体験型コンテンツの開発：日本文化や自然を深く体験できるサービスの提供
特に、限られた人的資源で質の高いサービスを提供するためのスマート化は、人口減少時代の日本において不可欠な戦略となっています。
まとめ：インバウンド観光の未来と私たちにできること
石破総理による第五次観光立国推進基本計画の策定指示は、日本のインバウンド観光の新たな時代の幕開けを象徴しています。2030年に向けた6,000万人・15兆円という高い目標は、官民一体となった取り組みなくしては達成できません。
観光立国の推進は、地方創生2.0の実現と日本経済の活性化に大きく貢献する可能性を秘めています。しかし同時に、地域の生活環境や文化を守りながら持続可能な形で観光を発展させるという難しい課題にも向き合う必要があります。
私たち一人ひとりが日本の魅力を再発見し、それを国内外に発信していくことも、観光立国の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。石破総理の言葉を借りれば、「官民一丸となり、観光戦略を強力に進めていく」ことが、これからの日本の観光の鍵となります。
