低グルテン食の影響を調べる試験
近年、欧米を中心に一部の人々はグルテン(小麦、大麦、ライ麦に含まれるタンパク質)を少なくする食事をすることが増えています。しかし、普段健康な成人が、グルテンを多く含む食品を少なくすることで何が起こるのか、まだよくわかっていないとされています。
そこで、ネイチャーコミュニケーションは試験を行いました。健康なデンマーク人60人を対象に、少ないグルテンの食事(1日に2グラムのグルテン)と多いグルテンの食事(1日に18グラムのグルテン)をそれぞれ8週間食べてもらい、その間に6週間以上の休み期間を設けその期間中は通常の食事(1日に12グラムのグルテン)を食べてもらいました。
結果として、低グルテンの食事は、腸の中の細菌の構成を少し変え、空腹時や食後のガスの発生を減らし、腹部の膨らみ感を改善することがわかりました。これらの結果から、低グルテンの食事が成人に及ぼす効果の多くは、食物繊維の種類が変わることによるものだと考えられました。
低グルテン、グルテンフリー食の影響は?
低グルテン食が健康な成人の腸内細菌叢、免疫機能、そして全体的な身体の健康にどのように影響を及ぼすかについての研究が行われています。
現時点(2018年の論文)ではグルテンを含む食品の摂取を控えることの健康への効果は明確には理解されていません。グルテンは主に小麦、ライ麦、大麦に含まれるタンパク質で、消化が困難なために腸内での免疫反応や腸の透過性、腸内細菌の活動に影響を及ぼす可能性があります。しかし、低グルテン食を摂ることは単にグルテンを減らすだけではなく、グルテンを含む食物繊維を他の食物繊維に置き換えることも必要です。
以前行われた短期間の研究では、グルテンフリー食が健康な成人の腸内細菌叢と免疫機能に影響を及ぼす可能性が示唆されましたが、結果は一貫していませんでした。
また、新しい研究では、60人のセリアック病(グルテンが原因となる慢性的な小腸疾患)のないデンマーク人の成人を対象にしたものが紹介されています。この研究により、低グルテン食が高グルテン食と比較して、腸内細菌叢の組成と機能、尿中の物質(メタボローム)、そして身体全体の生理学的マーカーに変化をもたらすことが示されています。
低グルテン食と腸内細菌叢との関係
この研究では、グルテンの少ない食事とグルテンの多い食事が腸の中の細菌や体の健康状態にどのような影響を与えるかを調べるための試験が行われました。
「グルテンの少ない食事とグルテンの多い食事をそれぞれ8週間食べてもらう」という2つの試験を行い、その間に少なくとも6週間の間隔を設けました。これを行ったのは81人で、そのうち18人は試験の条件に合わず、3人は試験に参加しないことを決めました。試験に参加したのは、病気を持たない22歳から65歳の成人60人で、体重が安定しており、健康状態も良好でした。
研究参加者は、(1)低グルテン食の後に高グルテン食を摂取するグループと、(2)高グルテン食の後に低グルテン食を摂取するグループに無作為に振り分けられたました。全体的に、参加者は試験に非常に協力的で、どちらの食事もきちんと食べていました。
グルテンの少ない食事期間中は、参加者は1日に2グラムのグルテンを摂取し、グルテンの多い食事期間中は、1日に18グラムのグルテンを摂取しました。なお、デンマーク人のグルテンの習慣的な摂取量は1日あたり10.4gとのことです。
参加者がどの程度試験に協力したかを調べるために、食事の記録や血液の検査を行いました。結果は、試験が適切に行われたことを示していました。
また、参加者が摂取した食物繊維の量は、グルテンの少ない食事とグルテンの多い食事の間で変わらなかったことがわかりました。ただし、グルテンの多い食事をした時は、全粒穀物の摂取量が多かったこともわかりました。
試験の結果を比較するために、参加者の腸の中の細菌や体の健康状態を測定しました。これらのデータを使って、どちらの食事がどのような影響を与えたかを詳しく分析しました。
高グルテン食と低グルテン食の体に与える影響とは
ネイチャーコミュニケーションの調査では、低グルテン食が血液中の白血球の数や、全身的な炎症や腸の炎症を示す指標には影響を与えないことがわかりました。同様に、腸の健康状態を示にも変化は見られませんでした。
しかし、血液を特定の物質(LPS)で刺激し、その結果として生じる炎症反応を見てみると、低グルテン食を摂っている期間中、炎症反応を示す物質(IL-1β)が少なくなることがわかりました。これは過去の研究でも報告されていることで、それによれば、排便物に含まれる物質で血液を刺激した結果、炎症反応が減少したという結果が出ています。
このことから、低グルテン食が人の免疫システムに何らかの影響を与える可能性があることが示唆されています。
今回、デンマークの健康な大人を対象とした実験研究で、低グルテンで食物繊維が豊富な食事が、腸内の微生物群を変化させ、膨満感や他の消化器系の不快症状を和らげ、また若干の体重減少を促したことが確認されました。これらの結果は、腸内の微生物のバランスや活動が変わることと関連している可能性が示されました。
研究者たちは、これらの効果が引き起こされた主な理由として、低グルテン食そのものよりも、食物繊維の供給源が小麦やライ麦から、野菜、玄米、トウモロコシ、オート麦、キヌアといった食品に変更されたことが大きな要因ではないかと考察しています。
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