観光地負担指数の数式化とその意義
観光産業、特にインバウンド観光に関与する地域では、「人手不足」という課題が度々指摘されます。弊社の仮説では、日本の観光市場において観光サービス需要が供給能力を上回る可能性が高いと考えております。
現在、日本は人口減少や高齢化の影響により、年間約50万人の人口減少が見込まれております。一方、海外からの観光客数は、コロナ前の2019年と比較して約500万人増加しており、2025年には総数が4000万人を超える可能性が示唆されています。こうした背景から、観光地の負担は「需要と供給のバランス」の問題として捉えられ、分かりやすい形で可視化するために以下の数式を考えてみたので、みなさんに共有させてください。この考え方が少しでもみなさんの業務のお役に立てば幸いです。
基本数式の提示
観光地負担指数 = 総観光サービス需要量 ÷ 総観光サービス供給能力
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総観光サービス需要量:訪日外国人観光客数と国内旅行客数の合計(需要側)
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総観光サービス供給能力:観光産業が提供可能な受入キャパシティ(供給側)
数式の詳細化
この基本式をより具体的に展開すると以下のように表せます:
数式の詳細は以下⬇︎
- F = 訪日外国人観光客数
- D_f = 外国人観光客1人あたりの平均サービス需要量
- D = 国内旅行客数
- D_d = 国内旅行客1人あたりの平均サービス需要量
- W = 観光関連産業の労働者数
- P = 労働者1人あたりの生産性
- I = インフラキャパシティ(宿泊施設数、交通インフラなど)
指数の解釈
本指数は、以下のように解釈されます。
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指数 > 1:需要が供給を上回り、過負荷状態(オーバーツーリズム)が懸念される
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指数 = 1:需要と供給が均衡している理想的な状態
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指数 < 1:供給が需要を上回り、余裕がある状態
指数が1に近い状態は、観光サービスの提供において労働者および観光客双方が満足している理想的なバランスを意味します。
労働力と生産性向上の重要性
日本国内での労働者数(W)の増加は、他産業との人材取り合いの影響や宿泊・飲食業界の給与水準の低さから容易ではありません。そのため、対応策として以下の二点が考えられます。
- 海外からの人材導入の増加
- 一人当たりの生産性向上(Pの向上)
弊社Grinoは、国内労働者数の拡大が難しい現状に鑑み、後者の生産性向上に重点を置いております。すなわち、W × Pが観光サービス供給能力の中核であると考え、日本国内でWの増加が望めない場合、Pの向上こそが供給能力改善の鍵となります。
特に、現代においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれる中、DX化できない領域はあります。宿泊・飲食業におけるキッチン業務の効率化はまさにそれで、非常に重要な課題です。キッチン業務の生産性向上は、全体の供給能力向上に直結し、結果として観光地負担指数を理想の水準(1)に近づける効果が期待されます。
数式の妥当性と考慮点
この概念は概ね間違っていないと思いますが、実用化にあたって考慮すべき点としては以下のような項目が考えられます。
- 季節変動: 年間を通じて観光客数は大きく変動するため、ピーク時と閑散期で別々に計算する
- 地域差: 特定の観光地に集中するため、国全体ではなく地域ごとに算出する
- サービスの質的差異: 高級宿泊施設と一般宿泊施設では供給能力の質が異なる
- 時間経過による変化: 労働者数の減少や生産性向上などの時間的変化を組み込む
このような数式の活用により、観光政策の立案や「持続可能な観光」に向けた施策の策定が、より明確かつ効果的に進められるのではないでしょうか。各企業や地域の皆様におかれましても、本提案をベースに、自社の状況や特性に合わせた最適な数式への転換・応用をぜひご検討いただければと存じます。
上記は数式はあくまで私たちが考案した数式ですので、みなさんもご自分の領域に最適な数式に適宜転換して活用してみてください!
前向きな改革の一歩として、皆様と共に観光業界の未来を切り拓いていけることを心より願っております。
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