がんは日本人の死因の第1位を占め、国民の約2人に1人が生涯のうちにがんに罹患すると予測されています。がんは遺伝的要因や加齢による影響も受けますが、喫煙や食事、運動不足などの生活習慣もがんの発症や進行に大きく関与していることが明らかになっています。
中でも食事は、がんを直接引き起こすことはありませんが、がん化を促進したり抑制したりする働きがあることが知られています。適切な食生活を送ることは、がんのリスク低減や予防の面からも重要な意味を持っています。
本記事では、がん予防の観点から望ましい食事について解説します。
がん予防の基本的な食事
がん予防を目的とした食事で最も重要なことは、全体としてバランスのよい食事をとることです。
具体的には、
- 植物性食品を中心に多様な食品を取り入れる
- 主食、主菜、副菜をそろえることで栄養のバランスを考える
- 塩分・糖分・脂肪の摂り過ぎに注意する
といったことがあげられます。一汁三菜を基本に、食事の構成や内容に配慮することが大切です。
各食品群ごとのポイント
次にがん予防目的で注目すべき食品や栄養素と、目安量について見ていきましょう。
●野菜
- 350g/日以上の摂取が推奨されている
- 特に緑黄色野菜を多く取り入れる
- β-カロテンなどの抗酸化成分が豊富
●果物
- 1日当たり野菜5皿分+果物1皿分が目安
- ビタミンCが豊富で免疫力アップにも良い
●全穀類
- 食物繊維が豊富で大腸がん予防に効果的
●大豆・大豆製品
- イソフラボンという成分ががん抑制作用がある
●乳製品
- カルシウムが豊富で、大腸がんリスク低減に役立つ
●魚介類
- DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富
以上ががん予防食におすすめの食品群とその理由です。
多様な食材をバランスよく取ることを念頭に置きつつ、上記食品を中心に取り入れていきましょう。
がんリスクを高める食べ物
一方でがんリスクを高める食べ物として以下のようなものが知られています。こちらは過剰な摂取に注意が必要です。
●塩辛い食品
- 塩分の過剰摂取で胃がんリスクが高まる
●牛肉・豚肉などの赤身肉
- 大腸がんのリスク上昇との関連が指摘されている
●糖質の多い食べ物
- インスリン値の上昇ががん細胞の増殖を促すことがある
●保存食や燻製食品など
- 発がん性物質に注意が必要
これらの食品は控えめな摂取にとどめるべきでしょう。極端な制限は必要ありませんが、とり過ぎには注意しつつ、上述のがん予防食を中心に食事を組み立てていくことが大切です。
食事以外の生活習慣も大切
がん予防のための食事について解説してきましたが、他の生活習慣も看過できません。喫煙はさまざまながんとの関連が指摘されており、禁煙が最も重要です。適度な運動と睡眠、ストレスコントロールも免疫力を高める意味で大切な要素です。
食事と併せ、これらの生活習慣にも注目しつつ、がんに罹患しにくい生活を送ることが大切だと言えるでしょう。
おわりに
本記事では、がん予防に効果があると考えられる食事の内容とポイントを解説しました。バランスのとれた食生活を基本に、塩分抑制や野菜の取り入れなどに注意しつつ、食事面からがんリスクの低減を図っていきましょう。食事以外の生活習慣と合わせ、総合的な予防対策が求められます。
参考文献
厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
厚生労働省策定「健康日本21(第二次)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
国立がん研究センター 科学的根拠に基づくがん予防
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html
日本対がん協会「がんを防ぐための12か条」
https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup#prevention